「間違いだらけのビール選び（清水義範著・講談社文庫2001刊）」を読んだ。清水義範（しみずよしのり1947生れ）氏は愛知教育大学（国語科）卒で、会社勤めの後、ＳＦ作家として活躍してきたようだ。また名古屋を紹介する作品もある。----- 「間違いだらけのビール選び」は1998年に出…… more された単行本の文庫化である。短編小説集（11篇）であり、ＰＨＳの携帯電話が登場したりして少し古いが面白さは失っていなかった。納められた短編のタイトルは次のとおりである。「間違いだらけのビール選び」「猫の額」「雨」「家内安全」「空白の頃」「二人の女」「ブラッドゾーン」「私の中の別人」「青空の季節」「島の一夜」「本番いきま～す」------ 初めてのテレビ出演の緊張とか、嫁姑との間に挟まれた孫娘とか、狭い庭に侵入する隣家の猫とか、声優に迫るストーカーとか、独りぼっちの正月とか、理系男子の小学生の頃とか、高卒大卒の同級生とか、至って身辺的な話題でありながら読めば其れなりの落ちがあって面白い趣向となっている。----- 清水義範夫妻には子供がいないそうであるが、周りの人々に対する細やかな思いやりが感じられる作品が多い。奥様と共作とも仰っているので、女性目線としか考えられないような作品も含まれているように思った。元々の専門が愛知教育大・国語科であるのだから物書きにはぴったりとも云えるのかもしれません。------40歳で作家デビューの後は60歳を迎えるまでの20年間を執筆活動に邁進して来られたそうであり、純文学系の作家ではないが、読んでいて違和感を生じないのは筆力の所為に違いない。設定が不思議でも現実離れしていても力のある作家は読ませてしまうのだから、単なる国語の教師の世界ではない。 close

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街（その６３４）