「女系図でみる驚きの日本史（大塚ひかり著・新潮新書2017刊）」に目を通した。大塚ひかり（おおつかひかり1961生れ）女史は早稲田大学文学部（史学科日本史）卒で、出版社に勤めた後、源氏物語を題材とするなど古典エッセイストとして活動している。----- 「女系図でみる驚きの日本史」…… more では、元々女系社会であった古代において、信じられるのは女系のみなのだから辿（たど）って意味がある女系を中心とした系図を各時代に当てはめてみたそうである。その様にして見ると大変分かり易く蘇我氏の滅亡と云っても女性の係累は生き残っている事が分かる。蘇我氏のＤＮＡは今も生き続けているのだ。----- 大塚ひかり女史は本物の日本史専攻の大学卒であり、現在の日本史の研究の先端をご存じのようであり、東アジアの極東に位置した日本列島に流れ込んだ渡来系支配者の係累を並べてくれている。記紀の封印をあっさりと解き放っていてとても面白い。学校歴史の旧態然とした皇国史観と変わらないような味気ない日本史ではなくて大陸・半島の興亡に連動して日本の支配者が移り変わる様も書いてくれている。応仁の乱においても百済王家と伽耶・新羅の争いであったと云うのである。山口県に割拠していた大内氏は百済王家の一つであるとも書いている。百済滅亡後は大挙して日本列島に渡来者がきたため支配者の3割が今来の渡来人であったと云う。桓武天皇が平安京遷都したのも百済系の移民が多く住んでいた山城に自分たち支配者の都を移したのだとか。東アジアの大きな大局的な観点から日本史の研究は進んでいるので、分かり易いとも云える。女性特有の誤魔化さない書き方でもあり、一読の価値があるだろう。恐らく、参考文献の一つには林順治氏や石渡信一郎氏の学説が用いられているものとも思った。 close

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街（その５５７）