「対談・天皇日本史（山崎正和著・文春学藝ライブラリー2015刊）」を読んだ。山崎正和（やまざきまさかず1934生れ）氏は京大文学部卒・同博士課程修了で、阪大名誉教授・劇作家・評論家である。「対談・天皇日本史」は、昭和49年（1974）に雑誌文藝春秋に連載されたものを纏めて単行本と…… more して発刊されている。対談形式で次の10名の著名人と、日本史の各時代において天皇の果たした役割について意見を交わしている。「天智天皇・井上光貞（1917～1983）」「宇多天皇・竹内理三（1907～1997）」「後白河法皇・小西甚一（1915～2007）」「後醍醐天皇・芳賀幸四郎（1908～1996）」「後小松天皇・林屋辰三郎（1914～1998）」「正親町天皇・桑田忠親（1902～1987）」「後水尾天皇・奈良本辰也（1913～2001）」「明治天皇・司馬遼太郎（1923～1996）」「昭和天皇・高坂正堯（1934～1996）」「天皇及び天皇制の謎・小松左京（1931～2011）」----- 2015年現在において10名の対談相手は全て故人となられているが、戦後の代表的知性が天皇制をどのように考えていたかが良く分かる書物として今でも貴重な本であり、文庫化は当然だったろう。----- 文庫版あとがきに山崎正和氏が次の様に書いている処が10章の対談のそれぞれの要（かなめ）なのだなと感じた。「日本文明を論じるとき、それまでの私には一つの譲れない信条があった。それは日本と日本人にどんなユニークな特性があろうとも、必ずそれを国際的な文脈の中で捉え、普遍的な価値基準によって評価すると云うことである。日本らしさを世界の例外と見るのではなく人類文明の一個のヴァリエイションとして位置付けることだと言い換えても良い。お相手がどんな権威であり専門家であっても対談に臨む私にはこれだけは譲歩できない立場であってその思いが一段と私の緊張を高めていたことを想い出す。」----- 奈良県で仕事をする地方公共団体の職員であるならば、「対談・天皇日本史」を一読して置けば、種々参考となるだろうと思った。 close

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街（その５４５）