北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない 「日本語の水脈～日本語の年輪第二部（大野晋著・新潮文庫2002刊/1993版の文庫化）」を読んだ。大野晋（おおのすすむ1919～2008）氏は、東大（国文学科）卒で、学習院大学名誉教授である。古代日本語の研究を極めて、“日本語の形成（200…… more 0）”なる名著を物している。----- 「日本語の水脈」は、“日本語/古代タミル語起源説”を強く主張する著書を出す前の、重要な書籍である。比較言語学の手法を世界中に展開して、日本語のルーツを探しまくるのである。単なる国文学者であると、英米語の知識が不足していたりするのだが、大野晋氏は西欧語だけでなく、中国語/朝鮮語は言うに及ばず、インド先住民の言語にまで触手を伸ばして遂に古代タミル語が古代日本語に最も適合性が高いことを発見するのである。現在では抵抗する国語学者はいないが、当時は認めないと言う学者が多かったようだが、博学多識で研究精神の旺盛な大野晋氏の反論に応じることが出来ずに、大野晋氏のタミル語起源説は現在の学会では肯定されているようだ。----- 国語学者の頑迷固陋な読解力を大野晋氏の比較文化学的手法によれば、圧倒的な迫力で撃破されるものだから、学者仲間からの理解と敬意は当初、若い頃は得られなかったようだが、晩年に及んでその地位を固められたと云えようか。その悪戦苦闘の一場面を「日本語の水脈」は書き出しているかのようである。とてもリアルで面白い本である。 close

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街（その１０８３）